薬王堂気まぐれ通信使№787   2018-6-24
Yakuoudo Capricious Communications Satellite

6月24日、広島市による近隣地域の地域対策協議会の主催で毎年「薬草に親しむ会」を開いています。今年は熊野町の呉地ダム(呉地貯水池)で開催されました。
毎年の事ながら10年以上もこの会の講師を引き受けさせてもらっています。
場所は熊野町の西に位置する灌漑用の貯水池と言いましょうか、発電に用いるほどの規模ではなさそうです。
熊野町の役場の人から聞いたことですがこの貯水池は戦前からあったとのこと、戦後すぐの台風によって決壊し昭和25年ころから再構築された古い堰き止めダムとのことでした。
今日はよその奥さんとドライブ気分で現地に乗り込みました。
集合されたのは約30名、地域の熱心な植物好きの方々ばかりです。


開会までに一通り呉地ダムを一周しました。
途中、道がぬかるんで通行不能と判断しましたので引き返しての説明会にすることを予定しました。
安全第一、無理なく皆さんとまんべんなく話し合えるように、子供さんもおられたので興味のある虫にも気を使って歩くことにします。
ただここにはあまり目を引くような薬用植物も無く、一般の植物もありふれたものばかり・・先ずは花を咲かせたノアザミの解説から始めます。

ノアザミ

中国ではノアザミを含む近縁植物の根を「大薊」とし、止血を目的に用います。
サルトリイバラがありました。
いろいろな意見を聴くことも重要ですし、一人一人が会に参加しているという実感を持っていただくことが進行をスムースにさせてくれます。
私の地域ではサルトリイバラの葉を餅に利用します!とか、葉をカタロの葉と呼んでます!とか・・・
実際、かしわ餅という名称で親しまれている食べ物の表面にはこの葉が用いられています。
かしわ餅とはカシワ(柏)の葉で包んだ餅という意味でしょうがカシワの無い地域ではサルトリイバラの葉で包むことで日持ちをよくし、葉を剥がすのに粘着かずほのかな香りもあって食欲をそそります。
江戸から明治にかけて性病や皮膚病の解毒剤としてサルトリイバラの根は山帰来と呼ばれて用いられていたようです。
中国でもケナシサルトリイバラの根を菝葜(バッカツ)と呼び皮膚病などに用いています。
アオツヅラフジがありました。
かつて木防已はアオツヅラフジの蔓であろうと漢方処方に配剤されて用いられましたが吐き気を訴える方がおられました。
以来、オオツヅラフジが用いられていますが真相は如何に?分からない世界です。
ネムノキがありました。
ネムノキは合歓(ゴウカン)として薬用にします。
合歓とは合い歓(よろこ)ぶという意味、男女が寄り添っていることも意味するとか!花は乾燥させ浸出したものを服用することで睡眠薬として用いたと聞きます。
樹皮を合歓皮として精神安定や打撲に用いてきました。
湖畔に赤い花が咲いていました。


帰化植物の花・ノハラナデシコ


ベニバナセンブリでもなくハナハマセンブリとも違うようです。
知人からのメールがあり、ノハラナデシコという帰化植物とわかりました。
堰堤は古いコンクリで造られたようで押木の痕がはっきりと残っていました。


アケビが実をつけています。
ミツバアケビとアケビの違い、薬用ではどちらの茎も木通として用いられること、木通という字の意味はアケビの植性から名付けられたもので経験的に血液循環をよくするものとして利用されてきました。
クマノミズキが白い花を咲かせていました。
堰堤の下に大きなイソノキが赤い実をつけています。
リョウブ、アセビ、ヒサカキ、マツ、アカメガシワ・ウメモドキ・ヒメヤシャブシ・シャシャンボ・コナラ・アベマキ・・・乾燥した花崗岩特有の樹木が見られました。
草本ではオオバノトンボソウ・カキランモウセンゴケオカトラノオキジムシロなどの湿性植物がみられます。
枯れ木に粘菌が花(子実体)をつけていました。
木陰で皆さんといろいろな話に盛り上がります。


一列進行ではなかなか話し合えませんので貴重な時間でしたね。
いろんな質問が出てきました。
薬に関することだけでなく雑談といった感じでしたね。
それに対応してお答えする!というのが引率者としての役目でもあるし判らないことは矛先をそっと変えることで納得してもらったり・・いい加減な講師を務めてきました。
帰り際、地域の方にスモモをいただきました。


スモモ美人に囲まれて


ニンニクももってかえりんさい!と引き抜いてくれます。
来た甲斐があったというほどの有意義な薬草観察会でした。
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